人探し・行方不明者調査の費用と方法|公的窓口と探偵業者の使い分け

木製テーブルに広げた古い家族写真と地図を眺める40代後半の女性。優しい懐かしさを湛えた表情で人を探す場面。

家族や親戚、昔の知人と急に連絡が取れなくなったとき、多くの方が最初に迷うのが「警察に届け出るべきか、探偵に頼むべきか、それともまず役所に相談すべきか」という判断です。実は、人探しは事案の性質によって最適な相談先が異なり、順番を間違えると時間も費用も無駄になります。警察庁は2010年に「捜索願」という呼称を「行方不明者届」へ統一し、現在もこちらが正式名称です。

この記事では、人探し・行方不明者調査について、警察案件・探偵案件・弁護士案件の使い分け、それぞれの費用相場、公的窓口の活用方法、そして個人情報保護法・住民基本台帳法・戸籍法による制約を整理します。家出・失踪・相続人探し・旧友再会など、目的別の進め方も解説します。

この記事は、警察庁公表資料・行方不明者の発見活動に関する規則・住民基本台帳法・戸籍法・国民生活センター相談事例をもとに編集部で作成しています。特定の探偵事務所・弁護士事務所への推薦・斡旋は一切ありません。

目次

1. まず警察に相談すべきケース(特異行方不明者)

人探しで最優先かつ無料で動いてもらえるのが警察です。とくに、生命や身体に危険が及んでいる可能性がある場合は、ためらわず最寄りの警察署または交番に「行方不明者届」を提出してください。警察庁の「行方不明者の発見活動に関する規則」(平成21年国家公安委員会規則第13号)では、行方不明者を「一般行方不明者」と「特異行方不明者」の2種類に分類し、後者については警察が積極的に発見活動を行うと定めています。

特異行方不明者に該当する典型的なケースは次のとおりです。これらに当てはまる場合、警察は捜索や聞き込み、必要に応じて公開手配まで踏み込みます。

  • 殺人や略取誘拐など犯罪に巻き込まれた疑いがある
  • 遺書を残している、自殺をほのめかす言動があった
  • 認知症の高齢者で、徘徊により事故・凍死・水難の危険がある
  • 未成年者で、家出後の安全が確保されていない
  • 精神疾患により自傷他害のおそれがある
  • 水難・山岳遭難など、事故に遭った可能性が高い

警察庁の統計によれば、近年の行方不明者届の年間受理件数は8〜9万人前後で推移しており、その多くは1週間以内に所在が確認されています。届出費用はかかりません。届出時は本人の写真、身体的特徴、最後に着ていた服装、立ち回り先になりそうな場所、持ち物や所持金額を整理しておくと、捜索が早まります。

一方、成人が自分の意思で家を離れた、連絡を絶ったというケースは「一般行方不明者」として扱われ、警察は基本的に積極的な捜索を行いません。データベース登録はされますが、自ら探したい場合は次に説明する探偵業者や公的窓口の活用が必要になります。

2. 探偵業者を使うべきケース

警察が動かない一般行方不明者の捜索や、犯罪性のない人探し(旧友・初恋の人・元恩師との再会、相続調査の前段階での所在確認など)は、探偵業者の領域です。探偵は「探偵業の業務の適正化に関する法律」(探偵業法)に基づき、公安委員会へ届出を行い、聞き込み・尾行・張り込みといった方法で対象者の所在を調べます。

探偵に依頼する典型的なケースは次のとおりです。

  • 家を出た成人の家族・親族の所在確認(事件性なし)
  • 音信不通になった知人・恩師・初恋の人との再会希望
  • 相続手続きの前段階で、相続人や受遺者の所在確認
  • 債権者として、債務者の所在確認(弁護士と連携)
  • 養子縁組した実親や生き別れた兄弟姉妹の調査

ただし、依頼前に必ず確認したいのが「対象者にとって望まない接触ではないか」という点です。家庭内暴力(DV)や虐待から逃れて転居した人を探すよう依頼することは、ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)や個人情報保護法に抵触する可能性があり、まともな探偵業者であれば受任を断ります。「住所を教える」「対象者を呼び出す」といった依頼ができないケースもあると理解しておきましょう(→ ストーカー被害から逃れるための完全ガイドも参照)。

3. 公的窓口・行政手続きの使い分け

警察と探偵以外にも、目的に応じて使える公的窓口があります。費用が安いか無料で、手続きが正当であれば法的にも問題ない方法ばかりです。先に検討すべき選択肢として整理します。

窓口使えるケース費用制約
警察署・交番事件性・自殺・徘徊など特異行方不明者無料一般行方不明者は積極捜索なし
市区町村役場(戸籍課)戸籍の附票で住所履歴を確認1通300〜400円本人・配偶者・直系血族のみ請求可。第三者は正当な理由が必要(戸籍法第10条の2)
家庭裁判所(不在者財産管理人)不在者の財産管理が必要な場合申立て手数料800円〜家庭裁判所への申立てが原則
弁護士会照会(23条照会)相続・債権回収などで第三者の住所調査1件8,000〜10,000円程度+弁護士費用弁護士を経由する必要あり
家庭裁判所(失踪宣告)7年以上行方不明等申立て手数料800円+公告費用普通失踪は7年、危難失踪は1年経過が要件(民法第30条)
自治体福祉窓口認知症高齢者の徘徊対策、SOSネットワーク無料事前登録が必要な自治体が多い

とくに見落とされがちなのが戸籍の附票です。本人・配偶者・直系血族(親、子、孫など)であれば、市区町村役場で附票を請求することで、対象者の住民票上の住所履歴を確認できます。家を出た子どもや親、離縁した配偶者の所在は、附票の取得だけで判明することが少なくありません。

また、相続関連で他の相続人の所在を調べたい場合は、戸籍法上「正当な理由のある第三者」として附票・戸籍謄本を取得できます。司法書士や弁護士に依頼すれば、職務上請求書を使って効率的に集めてくれます。探偵に依頼する前に、まずはこの行政ルートで解決できないかを検討してください。

4. 人探し調査の費用相場

人探しの費用は、事案の難易度・手がかりの量・対象エリアの広さによって大きく変動します。手がかりがほとんどない調査は、浮気調査などと比べて成功率が読みにくいため、料金体系も特殊になりがちです。業界各社の公表料金や国民生活センターの相談事例から、目安となる相場をまとめます(2024年時点・編集部調べ、推薦・斡旋ではありません)。

調査タイプ費用相場補足
家出人捜索(成人・手がかり中程度)30〜80万円立ち回り先や交友関係の情報があるかで変動
家出人捜索(手がかりほぼなし・広域)80〜200万円調査エリアが全国規模になると上限を超えることも
旧友・恩師・初恋の人探し10〜30万円当時の住所・卒業校・勤務先など情報量で変動
相続人調査(戸籍収集中心)5〜20万円司法書士・行政書士に依頼するのが一般的
所在確認(住所だけ知りたい)10〜40万円戸籍附票で取得できる場合は不要
成功報酬型(成功時の追加報酬)20〜100万円「成功」の定義を契約書で必ず明文化

注意したいのは、人探しは浮気調査以上に「不成功で終わる可能性」が高い調査だという点です。手がかりが古い、対象者が意図的に住民票を移していない、海外に出ている――こうした場合、数百万円かけても所在判明に至らないこともあります。契約前に「不成功時の費用」「途中解約の精算基準」「報告書の形式」を必ず確認してください(→ 浮気調査の費用相場と契約時チェックリストも同じ考え方が適用できます)。

5. 警察案件 vs 探偵案件 vs 弁護士案件 比較表

「自分のケースはどこに相談すべきか」を判断するために、3つの相談先を機能・費用・対応範囲で比較します。複数のルートを組み合わせて使うのが現実的です。

項目警察案件探偵案件弁護士案件
主な対象特異行方不明者(事件性・自殺・徘徊等)一般行方不明者・旧友再会・所在確認相続・債権回収・失踪宣告・離婚関連
費用無料10〜200万円23条照会1件8,000〜10,000円+着手金10〜30万円〜
強制力あり(公開手配・捜査)なし(任意の調査)あり(裁判手続き・職務上請求)
調査スピード緊急時は即日1〜3か月程度2〜6か月程度
得意分野身体・生命の危険、犯罪関連聞き込み・尾行・現地調査戸籍収集・公的書類請求・法的手続き
依頼の制約事件性の判断は警察の裁量DV被害者捜索など違法依頼は不可正当な理由(相続・債権等)が必要
相談窓口最寄りの警察署・交番(#9110も可)公安委員会届出済の探偵事務所各都道府県弁護士会・法テラス

判断のフローは以下のとおりです。

  1. 命の危険がある可能性が少しでもあるなら、まず警察。これは絶対に最優先
  2. 本人・配偶者・直系血族なら戸籍附票で住所履歴を確認
  3. 相続・債権など正当な理由があるなら弁護士会照会または司法書士の職務上請求
  4. 上記で解決しない場合に探偵業者へ依頼。複数社で見積もりを取る

6. 個人情報保護法・住基法・戸籍法の制約

人探しを進めるうえで、依頼者・調査者ともに必ず理解しておくべきなのが関連法による制約です。「いくら払っても、法的に取れない情報は取れない」のが現実で、これを無視した業者は違法業者と判断できます。

法律主な制約
個人情報保護法第三者への個人情報提供は本人同意が原則。違反時は罰則あり
住民基本台帳法住民票・戸籍附票の閲覧・写しの交付は、本人・同一世帯員・正当な理由のある第三者のみ。なりすまし請求は刑事罰
戸籍法戸籍謄本・抄本の請求も同様に厳格。第10条の2で「正当な理由」が必要と規定
探偵業法違法な手段(盗聴・住居侵入・なりすまし請求)による調査は禁止。違反時は営業停止処分
ストーカー規制法つきまとい目的の所在調査は依頼自体が違法になる可能性
DV防止法支援措置申出が出ている対象者の住民票は、加害者側からの請求では取得不可

「相手の住民票を勝手に取れます」「スマホのGPSを遠隔操作で追えます」と謳う業者は、ほぼ確実に違法行為を行っています。正規の探偵業者は法的にできることと、できないことを明確に説明するため、最初の面談での説明内容も業者選びの判断材料になります(→ 探偵の選び方と悪徳業者の見分け方)。

7. 公的相談窓口

窓口相談内容連絡先
最寄りの警察署・交番行方不明者届の提出、特異行方不明者の捜索依頼110(緊急)/#9110(相談)
市区町村役場 戸籍課戸籍附票の請求、住所履歴の確認各自治体公式サイト
各都道府県弁護士会23条照会の利用、失踪宣告手続きの相談nichibenren.or.jp
法テラス無料法律相談、収入基準を満たせば代理人費用立替0570-078374(houterasu.or.jp)
消費者ホットライン探偵業者との契約トラブル全般188(いやや)
国民生活センター探偵業関連の相談事例検索kokusen.go.jp
地域包括支援センター認知症高齢者の徘徊SOSネットワーク登録各自治体公式サイト

→ より詳しい相談窓口一覧は浮気相談ページに掲載しています。

8. よくある質問

Q1. 「捜索願」と「行方不明者届」はどう違いますか?

A. 名称が変わっただけで、実質的には同じ手続きです。警察庁は2010年4月1日施行の「行方不明者の発見活動に関する規則」により、それまで一般的だった「捜索願」という呼称を「行方不明者届」に統一しました。現在の警察窓口でも「捜索願」と言えば対応してもらえますが、書面上は「行方不明者届」となります。費用は無料、本人の写真や身体的特徴、最後に着ていた服装、立ち回り先などを伝えると捜索が早まります。

Q2. 警察に届け出ても動いてくれないと聞きました。本当ですか?

A. 「特異行方不明者」と判断されれば、警察は積極的に捜索します。具体的には、犯罪・事故・自殺の可能性、認知症高齢者の徘徊、未成年の家出後の安全懸念などが該当します。一方、成人が自らの意思で家を離れた「一般行方不明者」については、データベース登録のみで積極捜索は行われません。これは「成人の自由意思を尊重する」という警察の運用上の原則によるものです。後者の場合は、戸籍附票の確認や探偵業者の活用を検討してください。

Q3. 相続のために遠縁の親戚を探したいのですが、どこに相談すべきですか?

A. 司法書士または弁護士への相談が最短ルートです。相続人調査では、職務上請求書という制度を使って戸籍謄本・除籍謄本・戸籍附票を効率的に収集できます。費用相場は5〜20万円程度(戸籍通数による)。所在不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる手続きも併せて検討します。探偵に頼むのは、戸籍では追えないところまで実地で確認したい場合に限定するのが費用対効果の面で合理的です。

Q4. 昔の知人と再会したい場合、探偵に頼めば必ず見つかりますか?

A. 残念ながら確実ではありません。当時の住所・卒業校・勤務先・共通の知人など、手がかりが多いほど発見率は上がりますが、相手が結婚で改姓している、転居を繰り返している、SNSを使っていないといった条件が重なると、数十万円かけても所在判明に至らないこともあります。契約前に「不成功時の費用」「成功の定義」「調査期間の上限」を必ず確認してください。また、相手が再会を望んでいない可能性もあるため、見つかった後の連絡方法(業者経由で意思確認してもらう等)も事前に決めておくと安心です。

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まとめ:人探しは「順番」を間違えなければ費用は抑えられる

人探し・行方不明者調査でもっとも大切なのは、事案の性質に応じた相談先の順番です。命の危険がある可能性が少しでもあれば真っ先に警察、本人・配偶者・直系血族なら戸籍附票、相続や債権など正当な理由があれば弁護士会照会、それでも解決しない場合に探偵業者――この順序を踏むことで、無駄な費用を払わずに済みます。

そして、どのルートを選ぶ場合も、個人情報保護法・住民基本台帳法・戸籍法・探偵業法の制約を理解しておくことが、自分自身を法的トラブルから守ることにつながります。「住民票を勝手に取れます」「相手の現在地を即日で割り出せます」と謳う業者には絶対に依頼せず、必ず公安委員会届出番号と契約書の有無を確認してください。

感情的に焦らず、まず公的窓口で相談する。これだけで、多くのケースは費用ゼロから数万円の範囲で解決できます。

参考文献・出典


最終更新:2026年4月26日|執筆:探偵の教科書 編集部|この記事は、編集方針に基づき、警察庁公表資料、行方不明者の発見活動に関する規則、住民基本台帳法・戸籍法・個人情報保護法の条文、国民生活センター相談事例をもとに作成しました。特定の探偵事務所・弁護士事務所への推薦・斡旋は一切ありません。個別の法的判断は、必ず弁護士・司法書士など専門家にご相談ください。

編集部が公開判例・公的統計に基づき再構成した「想定ケース集」のうち、本記事のテーマに関連するものを掲載します。期間・費用・進め方の目安として参照してください(実際の事案ではありません)。

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この記事を書いた人

「探偵の教科書」編集部。浮気調査・探偵業界・慰謝料の制度と過去の裁判事例を、e-Gov法令/最高裁判所の判決/国民生活センター等の一次情報のみで解説。捏造体験談ゼロ、特定業者への斡旋なし。記事は最低2名のクロスチェックを経て公開し、法令改正・新たな裁判で随時改稿。詳細な編集ルールは『編集方針』ページをご覧ください。

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