- 想定依頼者
- 40代 / 男性 / IT企業(従業員50名規模)の代表取締役 / 東京都港区在住
- 想定期間
- 30日(依頼〜証拠取得まで)
- 想定費用レンジ
- ¥800,000 〜 ¥1,500,000
- 結末
- 架空請求書による不正経理 累計約420万円(月平均35万円×12か月)を確認 → 顧問弁護士同席で本人面談 → 懲戒解雇 + 民事訴訟で全額返還の調停成立。刑事告訴は被害額・関係者範囲を踏まえて見送り、社内コンプライアンス体制を再構築
- 参照根拠
- 刑法 第253条(業務上横領罪)(ほか4件、記事末参照)
取引先への支払が前年比で月35万円ほど上振れし、内訳に小口の備品請求が断続的に並んでいた──本記事は、編集部が公開判例と警察庁犯罪統計をもとに再構成した想定ケースです。実在の依頼ではありませんが、刑法253条(業務上横領)と社内コンプライアンス実務をふまえ、30日・想定費用約110万円で「客観的な事実」を確認し、弁護士同席の本人面談まで進めた進め方を、判断と費用の根拠つきで開示します。
1. このケースの背景と仮想ペルソナ
仮想の依頼者は、東京都港区に本社を置く従業員50名規模のIT企業を率いる40代男性の代表取締役です。社内では経理担当の30代女性(勤続5年、人物的な評価は高い)が伝票・支払処理を一手に担っていました。半年に一度の内部監査で、ある取引先への支払額が前年同月比で月35万円ほど上振れしていることが指摘されます。内訳を確認すると、聞き慣れない小口の備品請求が複数の取引先名義で繰り返し計上されていました。本人ヒアリングでは「決算間近で適切に処理しただけ」との回答で、具体的な納品物の特定までは至りません。社内関係を傷つけずに事実関係を確認したい一方、見送れば被害が膨張しかねない──このジレンマが、外部専門家への相談を決定づけました。法人案件は感情ではなく、客観的な書類と行動の事実で語れるかどうかが起点になります。
2. 依頼に至るまでの経緯
代表取締役がまず取った行動は、内部監査担当と顧問弁護士への一次相談でした。社内規程(就業規則・経理規程)の調査権限の範囲を確認し、本人の自宅・私生活には踏み込まないこと、合意なく端末データを取得しないことを方針として定めます。次に、過去2年分の請求書・伝票・取引先台帳をPDF化し、不審な取引先名義の登記簿・所在地確認を顧問弁護士の補助者に依頼しました。ここまでで「複数の取引先が同一住所・同一電話で登記」という共通点が浮かびましたが、社内のリソースだけでは現地確認や業務外の生活実態の確認まで手が回りません。探偵業者は「客観的な事実の収集」に特化させ、判断(懲戒・告訴・民事)は経営者と弁護士で行うという役割分担を契約段階で明文化したうえで、面談・書面調査・現地確認・業務外行動確認の4段階を含む30日プランを発注しました。費用見積りは800,000〜1,500,000円のレンジで、上限を超える場合は中間報告で再合意する条件付きです。
3. 調査計画と実施タイムライン
30日の枠組みは、「書類の流れ」と「人と取引先の実在性」を二系統で立証する設計です。Day1で無料相談・契約・社内資料の閲覧範囲を書面合意し、Day7までに過去2年分の請求書・伝票を時系列でマッピング。Day14は不審取引先の登記住所への現地確認と公開情報照合を行い、Day22に対象者の業務外の生活実態を合意済みの範囲で確認します。Day30で報告書を納品し、顧問弁護士同席の本人面談に同行する流れです。違法調査・差別目的調査の禁止(探偵業法第6条 業務の実施の原則)は法人案件でも不変で、対象者の私生活への過剰な踏み込みは契約段階で除外しました。下図のタイムラインは、書類精査と現地・行動確認を交互に進めた30日のリズムを示しています。
4. 調査結果と費用内訳
30日の調査で確認できたのは、架空に近い小口取引先名義の請求書を経由した不正経理が累計約420万円(月平均35万円×12か月)に達していたという事実関係でした。複数の取引先が同一住所・同一電話で登記され、現地確認では実体ある事業所を確認できなかった一方、業務外の行動確認で対象者と取引先名義人の生活上の接点が観察されました。これらは「客観的な事実の集合」であり、懲戒や告訴の判断は経営者と弁護士の領域です。費用は合計110万円(税抜)で、内訳は基本料金55%(書類精査支援+業務外行動確認の人件費)、経費18%(都内移動+他県の登記住所訪問の交通費)、機材費12%(望遠ズーム・合意の上で使用したボイスレコーダー)、報告書15%(不正経理フロー図+写真25点+関係者証言メモ)です。下図に区分の比率と実額を示します。100%=¥1,100,000 で齟齬がないことを確認済みです。
5. 解決後の選択肢(弁護士相談・自治体窓口・社内通報など)
事実関係が確認できた段階での選択肢は、ひとつではありません。被害規模・関与人数・社内体制の成熟度によって、最適解は変わります。本ケースでは顧問弁護士同席で本人面談 → 懲戒解雇 + 民事訴訟で全額返還の調停成立という結末となり、刑事告訴は被害額・関係者範囲・対象者の弁済意思を踏まえて見送られました。代わりに、社内承認フロー・支払権限・内部監査の3点を見直すコンプライアンス再構築に経営資源を振り向けています。下表は、本ケースで実際に俎上にあがった4つの選択肢の比較です。
| 選択肢 | 費用感 | 期間 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 社内コンプラ通報・内部監査 | 0〜数十万円 | 2〜6か月 | 関係を壊しにくい/再発防止に直結 | 権限と独立性が弱いと事実が掘り下がらない |
| 顧問弁護士・第三者委員会 | 30〜200万円 | 1〜3か月 | 法的判断と懲戒手続を一気通貫で進められる | 事実収集の現場リソースが不足しがち |
| 探偵業者(事実収集) | 80〜150万円 | 2週間〜2か月 | 書類精査+現地・行動確認を並列で進められる | 判断(懲戒・告訴・民事)は弁護士・経営者の領域 |
| 警察刑事告訴(業務上横領) | 実費 | 数か月〜年単位 | 強制捜査と公訴提起の可能性 | 立証の精度と被害金額の閾値が高い/公訴時効10年 |
役割分担の鉄則は「事実は探偵、判断は弁護士・経営者」です。この分担を契約書面に明記しておくと、後で「なぜ告訴しなかったのか」「なぜ懲戒で済ませたのか」と問われたときに、客観的な意思決定プロセスを示すことができます。
6. このケースから学ぶ編集部解説
編集部として強調したいのは、社内不正調査で最初に整える3点です。(1) 顧問弁護士の同席、(2) 内部規程上の調査権限の明確化(就業規則・経理規程の根拠条項を引く)、(3) 対象者の人権配慮(差別的調査の禁止/私生活への過剰介入の回避)。探偵業法第6条は、法人案件でも違法調査・差別目的調査を禁じています。また、業務上横領は刑法253条で10年以下の懲役、公訴時効は刑事訴訟法第250条との対応で10年とされ、早期発見ほど立証が容易です。警察庁の犯罪統計でも、業務上横領・背任は年単位で安定して相応の認知件数があり、暗数(未発見・未通報)はその数倍と推定されてきました。本ケースは「発見できた幸運」ではなく、内部監査の異常検知 → 顧問弁護士相談 → 探偵業者による事実収集 → 経営判断という分業の設計が機能した結果です。月35万円・累計420万円という数字はあくまで想定ですが、判定ロジック自体は再現可能です。
社内不正の疑いを掴んだら、弁護士と探偵の役割分担を整理しませんか?
参照判例
- 刑法 第253条(業務上横領罪)
- 民法 第709条(不法行為)・第715条(使用者責任)
- 刑事訴訟法 第250条(公訴時効)
- 探偵業の業務の適正化に関する法律 第6条(業務の実施の原則/2024年4月1日施行の改正反映版)
