- 想定依頼者
- 60代 / 男性 / 中小企業経営者 / 福岡県(福岡市)在住
- 想定期間
- 21日(依頼〜証拠取得まで)
- 想定費用レンジ
- ¥450,000 〜 ¥800,000
- 結末
- 東京都内の別アパートへ転居済み・健康問題なしと確認。本人意思を尊重し弁護士同席の書面連絡(月1メール)で段階再開、半年後の家族カウンセリング目標を設定。
- 参照根拠
- 民法 第30条(失踪宣告)/第25条(不在者の財産の管理)(ほか4件、記事末参照)
3週間ぶりに「無事だけ確認したい」——本記事は公開判例と公的統計をもとに編集部が再構成した想定ケースです。福岡在住の60代経営者が、東京で働く27歳の娘と連絡が途絶え、警察の家出人届だけでは動きが鈍いなか、探偵業者へ相談して21日で居場所と健康を確認するまでを、想定費用約45〜80万円・民法第30条と警察庁統計の根拠つきで解説します。失踪宣告との違いと、成人本人の意思尊重という前提も編集部が補足します。
1. このケースの背景と仮想ペルソナ
依頼者は福岡市在住の60代男性、地元で従業員30名規模の中小企業を経営。家族構成は妻(60代)、長女(27歳・東京都内勤務、事務職、独身)、長男(30代・既婚で別居)の4人。長女は半年前から東京で交際相手と同棲を始め、年末の帰省時に「上司との衝突と恋人とのケンカが重なって精神的にきつい」と母親に漏らしていた。3週間前を境にLINEは既読がつかず、職場には欠勤連絡が1回入ったきり。妻が毎日のように娘の名前を口にするようになり、依頼者は経営者として人捜しの専門領域に踏み出す決断を迫られた。福岡から東京まで物理的距離があり、家族だけで動くには情報が乏しすぎる——本ケースの出発点は、ここにある。
2. 依頼に至るまでの経緯
依頼者がまず動いたのは警察署への「行方不明者届(旧・家出人届)」の提出だ。だが事件性が低い成人案件は、警察の発見活動規則上、特異行方不明者(自殺・犯罪被害の懸念がある類型)に分類されない限り積極捜索の対象になりにくい。実務上、家族が受け取るのは「届出受理書」のみで、その後の進捗は基本的に共有されない。依頼者はその場で限界を感じた。
次に試みたのは、長女の職場の同僚に直接連絡を入れることだった。同僚からは「2週間前に有給を取り、連絡がつかない」「前から同棲相手とトラブルがあり辞めることも口にしていた」との伝聞が得られた。SNSは公開アカウントの更新が止まっており、家族のメッセージにも応答がない。事件性を疑い警察相談ダイヤル#9110にも電話したが、本人の自由意思による所在不明の可能性が高く、強制的な居場所開示は行えないとの回答だった。依頼者は「生存と健康の確認」を主目的に据え、福岡↔東京の遠距離稼働が前提となる探偵業者へ正式に相談を入れた。
3. 調査計画と実施タイムライン
調査計画は、無料相談で家族関係・最終接触日・職場情報・公開SNSアカウント・元同棲アパートの住所を共有するところから始まった。捜索対象が成人であるため、契約書には「生存と健康の確認をもって調査終了とし、本人意思に反する居場所の家族通知は別途協議する」との但し書きを明記。これは2024年4月1日施行の改正探偵業法と、警察庁の行方不明者発見活動の実務基準を踏まえた設計だ。
稼働4日間の構成は、東京駐在の調査員2名を充て、初日はSNSの公開投稿と過去の位置情報メタデータを解析、2日目は元同棲アパート周辺の聞き込み、3日目は職場最寄駅と前職コミュニティで立ち回り先を絞り込み、4日目に新居(別アパート)を特定して健康状態を遠目に確認、というフローを取った。本人と直接接触はせず、生存・健康確認の段階で家族にいったん中間報告を入れ、最終的な意思疎通の取り方は弁護士と家族カウンセラーを交えて設計し直す——これが本ケースの肝だ。
4. 調査結果と費用内訳
結果として、長女は元同棲相手との関係を清算し、東京都内の別アパートへ単身で転居していたことが判明した。新居は職場から徒歩圏で、健康・身なりに問題なく出勤も再開していた。報告書には行動記録、立ち回り先住所、写真15点(顔は伏せ型で家族向け配慮)、聞き込み概要を綴じ込み、現地・郵送のいずれにも対応した。本人と直接の接触は行っていない。
想定費用合計は¥620,000(税抜)。内訳は基本料金(人件費)58%・経費(福岡↔東京の航空券と宿泊)22%・機材費10%・報告書10%。事例パラメ上の最小〜最大レンジは¥450,000〜¥800,000で、行動の少ない案件なら下振れ、複数都市に立ち回り先が散る案件なら上振れする。日本調査業協会の業務取扱料金の目安と国民生活センター(PIO-NET)の探偵業相談中央値で、編集部が想定中値として整理した。
5. 解決後の選択肢(弁護士相談・自治体窓口・社内通報など)
生存と健康の確認だけで終わらせず、その後の家族関係をどう設計するかが本ジャンルの本質だ。本ケースでは、本人の意思を尊重しつつ段階的に距離を詰める方針として、弁護士同席の書面連絡(月1回のメール)からスタートし、半年後の家族カウンセリング再開を目標に置いた。以下、家族側が取りうる現実的な4選択肢を比較する。
| 選択肢 | 費用感 | 期間 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 警察への行方不明者届 | 無料 | 即日受理 | 特異行方不明者なら全国手配 | 事件性が低い成人案件は積極捜索になりにくい |
| 探偵業者への調査依頼 | 40〜80万円 | 2〜4週間 | 遠隔地の聞き込み・SNS解析を集中投下できる | 本人意思に反した居場所通知は避ける契約設計が必要 |
| 弁護士相談(家事事件) | 初回5,000〜1万円/時間制 | 随時 | 連絡再開の書面設計・接近禁止調整が可能 | 居場所自体は弁護士でも特定できない(調査機能は持たない) |
| 不在者財産管理人選任(民法25条) | 申立費用+管理人報酬 | 1〜数か月 | 財産権がからむ場合に裁判所主導で管理可能 | 本ケース(生存確認のみ)は対象外。財産処分の必要が出た時のみ |
注意したいのは、ここでの「不在者財産管理人」は民法第25条に基づく財産管理の制度で、民法第30条の「失踪宣告」(行方不明7年継続が要件)や、相続発生時の「相続財産清算人」とは別概念だ。生存確認段階の本ケースでは、いずれの裁判手続きも前提にならない。混同したまま家族間で話を進めると、本人の権利を害する設計になりかねない。
6. このケースから学ぶ編集部解説
編集部が伝えたい論点は2つある。第一に、警察庁「令和6年における行方不明者届受理等の状況」によれば直近の行方不明者届受理件数は年間約8万人台規模で推移し、その大半は受理から1週間以内に所在が確認されている。残る長期化案件で、家族が探偵業者を併用するのが定石だ。第二に、成人の家出は「捜索拒否権」が原則で、本人が見つかりたくない意思を示している場合、探偵業者ができるのは生存と健康の確認までで、本人意思に反した居場所の家族通知は2024年4月1日施行の改正探偵業法(特に第6条)の運用上、慎重判断が必要になる。
もし途中で自殺念慮・暴力被害・誘拐の兆候を見つけた場合、探偵業者の調査ではなく警察相談(#9110)→110への切替が最優先だ。家族の心情と本人の権利、どちらか一方ではなく両方を抱えたまま動くのが、長期化する行方不明案件の現実解になる。
家族の連絡途絶に直面したら、まず警察と探偵業者の役割分担を整理しませんか?
